2023年9月7日に当社経営陣による記者会見を行いましたので、概要をお伝えいたします。
1.はじめに
2023年7月開催MEPC80にて、国際海運におけるGHG排出削減目標「2050年ゼロ」が合意されました。来年以降、より具体的な規制強化の方向性が打ち出されることと思います。我々も舶用メーカーと協力しながら、より一層の開発努力を進めてまいります。
大きなハードルの一つであった鋼材の急騰による採算悪化は峠を越し、体力を維持して乗り越えることが出来ました。受注環境についても新規顧客の増加もあり、堅調な推移を予想しています。「生産」と「営業」両輪において、成長戦略を具体化していくための環境は整いつつあると感じています。
当社は、昨年までの厳しい採算の中でも香焼工場や大島工場隣接地取得など将来発展のための布石を打ってきました。今後は布石を生かすための具体的な検討段階に入っていきます。資機材インフレや為替など懸念事項は残されていますが、創業50周年を超え、次の成長戦略につないでいけるよう引き続き経営基盤の強化に努めてまいります。
2.受注状況と新造船マーケットの見通し
2022年度の新造船受注隻数は34隻でした。同年度の引渡隻数が36隻であり、ほぼ1年分の受注を進めたことになります。2023年9月7日現在の手持ち工事量は105隻となっています。
最近は欧米市場、国内市場問わず、新規の船主様からの受注が増加傾向にあります。本年7月に新造船の建造を開始した香焼工場との2工場体制を考える上で、既に実績のある船主様との関係を更に強化させていくのは勿論のこと、加えて新規の船主様との関係を広げていく事は非常に重要であり、今後とも海外、国内の両市場において船主様との関係を更に深め、そして広げて行きたいと考えています。
足下の新造船受注環境については、船価の大きな上昇は期待できないものの概ね堅調に推移するものと見ています。未だ、資材コスト等の上昇リスクも残されており、将来の採算レベルを慎重に見極めつつ今後の受注活動を進めてまいります。
3.香焼工場の今後の展開可能性
昨年2022年12月末に香焼工場の取得が完了して以降、大島工場建造船のブロック製造及び橋梁関連の工事を行ってきました。7月より新造船建造を開始し、香焼工場1番船の引渡は2024年7月引渡の予定です。暫くは当初計画通り年間3~4隻体制にて作り慣れた船型の建造を考えており、増産や新船型の建造については今後のマーケット状況や環境船ニーズの動向などの外部環境を見極めながら検討を進めていきます。
大島造船所にとっては初の複数工場体制となり、香焼工場単独での最適な活用法のみならず、大島工場と香焼工場それぞれの特性を生かした補完体制の構築が重要と考えています。今後は建造実績を踏まえ、香焼工場の強さ・弱さなどの特性を把握し、2工場それぞれの生産効率を高めていくための活用方法を考えていきます。また、新造船以外では洋上風力向け浮体、LNGタンク製造、鋼構造物などの検討を進めています。
4.脱炭素化に向けた技術開発、洋上風力向け浮体への取り組み
日本の造船産業を担う1社として、船主様へより高性能な製品を提供し続けると同時に、海上物流の脱炭素化にも貢献することは、これまで通り当社の社会的な責務です。
当社は既に全船型でEEDIフェーズ3に対応済みですが、市場の環境対応ニーズに応えるため、燃費性能の改善や、硬翼帆による風力の利用といった省エネ技術の開発を引き続き進めています。硬翼帆については、シップ・オブ・ザ・イヤー2022受賞のポストパナマックス船に続き、2024年引渡ウルトラマックス向けの小型硬翼帆の設計も進行中です。
次世代燃料船の開発にも注力しており、アンモニア燃料船については2022年12月にはDNVより基本設計承認(AiP;Approval in Principle)を取得しました。この承認は、当該船の設計が技術的な要件や安全性基準を満たしていることが確認されたことを示すものです。メタノール燃料船についても、当社の主力船型であるウルトラマックスとカムサマックスの基本計画を完了しております。
既に建造実績のあるLNG燃料船については、更なる競争力強化と、今後見込まれる需要増に応じた安定供給を確実なものにするべく、タンクの香焼工場での内製化計画を進めています。
また、香焼工場を拠点とした洋上風力発電向け浮体製造についても、国内・海外を含む案件への参画を検討しています。当社としては、浮体の製造に特化する一方で、プロジェクトで求められるデザイン・基数・納期に対し最適な施工法を策定・実行することで付加価値を創出していきたいと考えております。製造する浮体デザインは、矩形構造がコスト・量産性の面で有望と考えておりますが、条件に応じ多様なデザインに対応可能と考えております。
5.人員計画・採用計画
現在の社員数は、1,529名で、今年度は32名が入社しました。来年度は50名の採用を計画しています。
労働力不足への対応は昨年と変わらず重要な課題です。生産現場においては、自動化・デジタル化の推進に取り組み、設計業務においては、子会社を通じて積極的な海外リソースの活用を図っております。国内では中途入社を対象とした通年採用も始めています。
また、採用活動強化の一環として、当社や造船業へ興味をもっていただけるように、今年度から企業CM(みんなが大島ツクルシリーズ)を製作し、九州エリアでのTVCM放映やYouTubeの公式チャンネルで公開しています。その他、各種採用支援企業の活用、大学や高校訪問の強化に取り組み、今後も当社・造船業の魅力や将来性を広く発信してまいります。
以上