2022年8月31日に当社経営陣による記者会見を行いましたので、概要をお伝えいたします。
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1.はじめに
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前回2019年9月の会見以降、造船の事業環境は脱炭素化に向けた動きの加速、資機材価格の高騰や主要プレイヤーによる再編・提携等と大きく変動してきました。一方で、外部環境が変動したとしても、顧客ニーズを捉えた高品質・高付加価値製品を提供していくという当社の使命に変わりはありません。
足元は鋼材をはじめとした物価高騰の影響を受け非常に厳しい業績となりましたが、幸いなことに海運市況は堅調を維持しており、環境対応に向けた技術開発、香焼工場の有効活用といった将来への準備は今後も着実に進めていきたいと考えています。
当社は来年2月7日で創業50周年を迎えます。これも偏に皆様方のお力添えによるものであり、この場を借りて厚く感謝するとともに、今後も変わらぬお引き立てをお願い申し上げます。 -
2.受注状況と新造船マーケットの見通し
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2021年度は新造船需要が急回復し58隻を受注しました。2020年度の受注実績は19隻でしたので、そこから大きく成約数が増加しています。2022年8月31日現在の手持ち工事量は98隻となっています。
足下の新造船受注環境については、堅調なレベルを維持しているものの、欧米を中心に急激なインフレもあり、今後の景気減速懸念から発注に躊躇も見られます。注意が必要な状況ではありますが、当社としては物価の上昇リスクも未だ残されている中で、船価と利益レベルを慎重に見極めながら受注を進めていきたいと考えています。 -
3.新製品開発、脱炭素化に向けた技術開発
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日本の造船業界を代表する1社として、顧客により高性能な製品を提供し続けると同時に、海上物流の脱炭素化に貢献することを当社の社会的な責務と考えています。また、バルクに特化したユニークな造船所として、新船型ラインナップの拡充にも努めています。
(1)燃費性能改善
当社はフェーズ3対応船を先駆けて市場に投入し、受注を進めてまいりました。現在、来るポストフェーズ3に向けた準備としてさらなる性能改善を進めています。
(2)風力の利用
2018年から株式会社商船三井と共同研究開発にて進めてきたウィンドチャレンジャープロジェクトの硬翼帆が完成し、本船への搭載が完了しました。更に後続案件として、2024年に就航するウルトラマックスへの搭載に向けて、今回開発した硬翼帆より小型の帆の設計も開始しています。
(3)次世代燃料対応技術
次世代燃料船への顧客ニーズの高まりから、研究開発の人員を増加し体制を強化しました。
また今年2月にはマースクゼロカーボンシッピング研究所にミッションアンバサダーとして参画し、世界の業界関係者とともに、次世代燃料を含む脱炭素化技術の開発に積極的に貢献していきます。
今年度は当社として初のLNG燃料船が竣工予定です。受注も続いており、今後も高い需要が見込まれます。LNG燃料船に搭載するタンクについては、サプライチェーンリスク抑制のため、香焼工場での内製化計画を進めています。
アンモニア燃料船については、当社主力製品の中小型BCでは、普及までまだ時間がかかるものと考えていますが、先行きを現時点で判断することは困難であり、早期に対応可能となるよう開発を進めています。 -
4.香焼工場の活用計画
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2021年12月27日に三菱重工業株式会社よりドックと岸壁設備の引渡を受けました。残る建屋、機械設備の譲渡は今年度完了予定で、着実に進捗中です。
会社としてバルクに特化の方針に変更はありませんが、次世代燃料船、大型船、新造船以外では洋上風力の浮体等、当社の技術力で高付加価値を提供できる製品の製造拠点として活用を検討しています。
また大島工場とコラボし、お互いの生産性を更に高められる生産体制を検討していきます。 -
5.人員体制・採用計画
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現在の社員数は1,425名で、今年は37名が入社、来年は51名の採用を計画しています。
上記計画に香焼工場向けの人員は含まれていませんが、三菱長船協力会のご支援を得つつ、大島工場からの派遣と中途採用によって確保していきます。
少子高齢化・人員確保は当社にとっても重要な経営課題ですが、自動化・デジタル化の活用の他、造船業を魅力ある産業にし、働きがいのある会社にすることで人員確保に繋げていきたいと考えています。
以 上