大島造船所物語
Oshima Shipyard Story

明るく、強く、面白く。
地域と共に歩んできた大島造船所の物語。

会社の枠を超えた技術共同開発 – MIJACの設立と活動

会社の枠を超えた技術共同開発 - MIJACの設立と活動

平成23年(2011)11月30日、造船経営者の集まりである第1回拡大造船懇話会において、東京大学大学院の湯原、大和両教授の講演と議論が行われた。
その中で、日本の造船業が韓国、中国にシェアを奪われ続けており、これ以上低落すると、舶用工業や研究・教育機関を含めた造船産業の維持が難しくなる。その第1の対策は技術でリードすることであるが、日本では大手・中手造船所が約20社もあり、それぞれが個別に研究開発を行っていては、規模・質・スピードの何れも中国・韓国の造船業や欧米の舶用工業に敵わなくなると警鐘が鳴らされた。
また、それを憂い、大手中手を問わず造船所が共同して研究開発を行う組織を作り、研究資源を集中して世界をリードする研究開発を進めて、日本の技術の先進性と造船の競争力を強化すると共に造船業を支える人材を育成することを早急に実施すべきであるということになった。

その後、大島造船所も参加し、共同研究・開発を行う構想が練られ、仮称「R&Dセンター」を立ち上げる原案が作成された。この組織形態としては、当初は技術研究組合制度の方向で準備を進めていたが、最終的にダイナミックな対応がし易い株式会社方式を採ることとなった。以上の経緯を経て、平成25年(2013)4月1日、会社の枠を超えた技術共同開発を行う新会社、株式会社マリタイムイノベーションジャパン、略称MIJACが次のような目的で設立された。
・日本の造船・海運・海洋関連の技術をレベルアップし、日本の技術を世界に向かって発信し続ける。
 ・船会社・造船会社・船級協会・舶用機器メーカーが連携してオールジャパンで研究開発を行うプラットホームを設ける。
 ・世界の動向や変化を的確かつ迅速に把握し、常に世界トップレベルの技術を目指してフルスピードで挑戦する。
会社の運営については、資本金1千万円で、費用は会費、研究開発の各種補助金、共同研究の費用分担、業務委託料、ロイヤリティ等で賄うことになった。

メンバーは、R&Dセンター立ち上げ構想時には、造船5社、船級協会1社、船社3社の計9社であったが、MIJAC設立を経て、平成28年(2016)4月には、造船5社、船級協会1社、船社1社、舶用品メーカー9社、商社1社、出資銀行2行となる。造船からの参加は、造船専業の中手で、その中で1社が抜け、1社が新たに加わった。
造船大手は、総論として趣旨は解るが、参加には課題が大きいとのことで、その内の2社は当事者ではなく、側面から支援することとなる。
MIJAC社員は主に参加会社各社からの出向者で、27年12月現在、総数25名であった。MIJACとしては、日本の造船・海運業界の
 ・現在の業界規模の拡大
 ・造船産業を支える人材の育成
 ・造船・海運・海洋関連の技術力強化
という視点から、新たに参加を考える会社に対して常に門戸を開いておくこととした。

研究開発課題については、創業の平成25年(2013)度は、「現最新鋭船から更に実海域で30%省エネ船コンセプト開発」を始めとする12課題、26年度は6課題、27年度は8課題、28年度は14課題(各課題は1~4年計画)を立ち上げ、合計40課題を総額18億円(内2割は補助金)の予算で実施している。これらは当時の造船海運業界が最優先に掲げた省エネと環境対策に関する課題を中心に構成した。
上記以外の2つ目の柱として、今後長期に亘る課題である海洋分野にも拡げようと試みたが、燃料価格が低下する中で業界も参加会社も関心が薄くなり、調査活動に留まった。
一方、3年目から3つ目の柱として、生産技術を取り上げる方針を立てて、造船所との相談を行ったところ、従来の生産技術より、折から関心が高まったIOTやIndustry4.0、ビックデータ等ITを活用する分野に造船はどう関わるかが面白いという意見が多く、その方向の課題にも取り組んだ。

代表的な成果としては、30%省エネ船開発では、MIJAC開発分だけで平成25年(2013)度建造船に対して30%省エネの目処を付け、ハンディマックスBC換算で1隻あたり年間2000tの燃料削減効果が得られた。
省エネ以外では、船の運航時の厳しい騒音規定が強制化されたのを契機に、会員5造船所の実測・実験結果を共有した騒音対策用データベースの構築および騒音予測ツールの実用化促進、各社の防音設計体制構築支援を実施した。
船舶の燃料消費量の規制による曳航水槽を用いた船型開発では、造船技術センターの水槽に加えて、大学の曳航水槽利用による認証試験実施体制を共同で構築した。
平成27年(2015)4月には、「MAIJAC成果報告会」を開催。業界から200人が参加した。

一方、参加会社への報告や交流の場としては、次のようなことを行った。
 ・2~3ヶ月毎に参加会社とアドバイザーに研究計画・進捗・成果を報告し、アドバイスを受ける「アドバイザリー会議」
 ・半年毎に参加造船所を訪問して、各造船所の関心が高い課題の報告・相談・協議と新たな課題の相談を行う「造船所交流会」
 ・2ヶ月から半年毎に参加各社とMIJACの若手それぞれが持つ課題や将来の課題について意見交換する「若手交流会」
 ・半年毎に参加造船所の設計部長が集まり、取り上げるべき課題について検討や討議を行う「設計部長会」
・1~2ヶ月毎に外部から各分野の専門家を講師として招き、MIJAC社員が参加会社からの出席者と知見を深める「テーマ別講演会」

会社の枠を超えた技術共同開発の新たな試みとして、MIJACは、多数の研究開発課題に挑戦し、成果を上げてきた。
なお、平成28年(2016)末から、国交省が中心となり、大手造船所を含めたオールジャパンの技術センター設立が構想されたことから、平成29年3月31日、MIJACは発展的解消を図った。今後は、大島造船所もオールジャパンの技術センターの中で活躍することとなる。

会社の枠を超えた技術共同開発 - MIJACの設立と活動