大島造船所物語
Oshima Shipyard Story

明るく、強く、面白く。
地域と共に歩んできた大島造船所の物語。

シンデレラの靴 – 実現不可能と思われたコストダウン達成

シンデレラの靴 - 実現不可能と思われたコストダウン達成

平成10年に入っても、わが国をはじめとして、東南アジア・韓国・中国・ロシアの経済は、低迷を続けていた。米国経済にも翳りが見え始め、世界経済は正に同時不況の様相を呈してきた。
海運市況は船腹過剰で運賃が低迷し、船主に発注意欲が見えない。仮に商談があっても、競争力のある韓国の安値攻勢により、船価の下落は止まるところを知らない。
円高対策で為替差損を回避し、一安心したのも束の間、受注が進まないようになった。10年に成約できた船は、10隻に留まり、13年度引渡予定の契約船は1隻もない状態だった。
10年の常勤取締役報連相研修会(取研)では、営業の主張する13年度以降の受注船価予想があまりにも低く、会議は大荒れに荒れた。

注文あってこそ、コストデザインが可能になり、前広な資材調達ができ、無駄のない的を絞った計画的な設備投資を行うことができる。
受注がなければ、潜在的な競争力があってもそれを発揮することができない。
全てが「まず、受注ありき」である。
注文を取るためには、徹底したコストダウンしか方法がない。
コスト競争力の裏付けのない技術力、開発力、販売力などは、砂上の楼閣に等しい。
かくして、11年3月及び7月の取研において「平成13年度コストダウン目標」が各部門の総意で策定された。
これを携えて、営業部及び設計部が世界各国を飛び回り、活発な受注活動を展開した結果、13年度と14年度前半の船台を埋めることができた。

「平成13年度コストダウン目標」は「初めに受注ありき」で、いわば「靴に足を合わせる」ようなものである。

バルクのCGT(185頁の用語解説参照)当たり船価は、13年度船は10年度に比べて30%以上も下落していた。平成13年度の損益は、平成10年度のコストなら、3桁の億に近い赤字である。達成不可能とも思えるコストダウン目標を巡り、大論争が半年にわたって続いた末、南社長の膨大な資料を交えた経済見通し等の説得により、なんとか纏まった。この決定によりコストダウン達成のため、全ての項目に聖域を設けず、大幅な削減率を織り込んだ。人件費削減、材料費削減、諸経費の削減は元より、バーベキュー大会、大造オープンゴルフ大会等の一切の催しを中止。新聞・雑誌・会費といった対外的出費の一部も止めた。

この結果、13年度はコストダウンが実り、利益を計上することができた。
当たり前以上のことを並大抵以上の努力により実現した。
正に「シンデレラの靴」に足を合わせることができたのだ。
これは設計の活躍、資材の奮闘、工作の工程通りの建造、総務の全社一丸体制の構築、経営の横串通しといったあらゆる努力が融合した結果に他ならない。
設計・資材・工作のコスト部隊が受注戦線で有利に戦えるコストを実現した。
これに力を得て、営業は厳しい受注環境に耐えて、年間24隻に見合う受注活動体制に入っていった。
多数隻受注の成果で、財経部は従来にない余裕を持てるようになった。
また、設計技術力と工作能力の向上も相まって、船もハンディマックスを中核に、スモールハンディからパナマックスへ、更には90型石炭船へとターゲットを広げた。更にダブルハル、セミオープン、オープン、荷役自動化船と「バルクに特化」し、「バルクの深化」を図っていった。

シンデレラの靴 - 実現不可能と思われたコストダウン達成