大島造船所物語
Oshima Shipyard Story

明るく、強く、面白く。
地域と共に歩んできた大島造船所の物語。

造船業はおもてなしの心 – 命名引渡式

造船業はおもてなしの心 - 命名引渡式

造船業はお客様から1隻ずつ船の注文を受け、1隻ずつ丹精こめて建造していく個別受注生産の産業である。1隻の船の設計を始めて資材を手配するまでに約12ヶ月、建造するのに約8ヶ月の月日を要する。引合い・受注から命名引渡式まで、その都度、船主・荷主等のお客様と深く関わっていく。その中でも、最も華麗なものが船の竣工セレモニーの命名引渡式である。

命名引渡式は船主と造船所が関係者をお招きして行うもので、前夜祭、調印式(実質的な引渡)、命名式、祝賀会、出航見送りと一連の行事が続く。
前夜祭では、完成した船に関わった人々、即ち、荷物を依頼する人(荷主)、船を動かす人(用船者)、注文をする人(船主)、お金を用立てる人(ファイナンサー)、船主の依頼を受けて建造を見守る人(船主監督)、注文を仲介する人(商社)、船を造る人(造船所)、その他関係ある人々が一堂に会して竣工を祝い、お互いに言葉や態度で感謝の意を伝え合う。
その後、歌に踊り、マジックなどを交えて賑やかな宴会が繰り広げられる。こうして飲んで歌ってさらに胸襟を開いたお付き合いとなっていく。
お客様に喜んで頂く楽しい集いであるが、担当部門にとっては楽しみどころか、ご満足頂けるだろうかと気遣いの方がはるかに大きく、傍目では想像のつかない大変な仕事である。

前夜祭の翌日は、先ず、ホテルの一室で船主、商社、造船所などの契約当事者間で関係書類が調印され、書類上の引渡が行われる。その後、前夜祭に出席した人々と建造規格を見守る人(船級協会)を含む関係者が、完成した本船の前に駆けつけ、式台へ上がる。そして、大勢の町民、一般の見学者も参加して、命名式が厳か、かつ晴れやかに挙行される。

式典のハイライトは、命名者により本船の命名が行われる時であり、また、主賓により斧で支綱が切断され、シャンペンが割られる時である。シャンペンが割れると同時にくす玉が開き、テープが滝のようにくす玉からも船側からも流れ落ちる。時同じくして白鳩が飛び立ち、五色の風船がシャボン玉のように舞い上がる。
この瞬間、喜びと感謝と安全航海への願いという、みんなの思いが一つになって昇華する。荷物を出す人、船を注文した人、造った人など関係者全員、見学者全員がすべてを忘れて感動を共有するのである。

その後、関係者は会場を移して、船の竣工と命名引渡式が滞りなく終わったことを祝う祝賀会に入り、お互いに感謝の意をこめて、長く記憶に残る記念品を交換し合う。また記念の植樹に思い出を刻み、再び来る日を夢見る。
祝賀会が終わると、関係者ならびに町民は岸壁に戻り、元気に旅立つ本船を、わが娘を思う気持ちと同じように幸多かれと、小旗を振って見えなくなるまで見送る。
そして最後に、お招きしたお客様を町民と造船所の人々が「また、お越し下さい」と心をこめて見送り、一連の全ての行事が終わる。
この時、船を造った者は、お客様に満足して頂ける船を精魂こめて完成させたという達成感に浸るのである。

造船業はおもてなしの心 - 命名引渡式